新NISAを始めてしばらくたち、評価額が買い値を下回った。画面を見るたびに気持ちが沈む。「もう売って損切りすべきか」「この先どうなるのか」という不安は、投資を続けている人なら一度は経験するでしょう。
暴落時や含み損の局面で、冷静に動ける人はそう多くありません。感情が先立つと判断を誤りやすく、せっかく積み上げた非課税の恩恵を手放す結果になりかねないのです。この記事では、含み損が出た時に何が起きているのか、そして取るべき行動と避けるべき行動を整理します。
含み損は「損失確定」ではない
株価や投資信託の価格が買い値を下回った状態を含み損と言います。保有しているだけの段階では、損失はまだ確定していません。
重要なのは、含み損がある状態でも「売却しない限り損は実現しない」という点です。保有を続けている限り、価格が回復する可能性があります。
新NISAで投資信託を積み立てている場合、10年・20年の長期で見れば一時的な下落に過ぎないケースがほとんど。リーマンショック(2008年)やコロナショック(2020年)など過去の大きな暴落でも、数年以内に価格は回復してきた実績があります。※過去の実績であり、将来の成果を保証するものではありません
売ってしまうと何が消えるか
含み損の状態で売却すると、2つのものが同時に消えます。
まず「損失が確定する」こと。評価損は売った瞬間に現実の損失になります。
そしてもう1つが非課税枠の消滅です。新NISAの非課税保有限度額は生涯1,800万円。資産から得た利益は非課税になりますが、売却して枠を使ってしまうと、翌年まで再投資する余地が生まれません。※金融庁「NISAの概要」より(2026年3月時点)
たとえば100万円を投資して90万円になっている状態で売ると、10万円の損失が確定する上に、100万円分の非課税枠を消費したことになります。翌年に枠が戻っても、損失分を取り戻すまでの時間が余計にかかるでしょう。
暴落時にやってはいけない3つのこと
1. 感情だけで売却する
「もう耐えられない」「これ以上下がったら怖い」という焦りからの売却は、投資で最もよくある失敗パターンです。価格が下がっている時期は、言い換えれば将来の回復余地が大きい局面でもあります。感情的な売りは、回復の恩恵を受ける前にポジションを手放す行為です。
2. まとまった資金を一気に投入する
「安くなったから今がチャンス」と、手元の資金を一度に投入することは慎重に考えるべきでしょう。暴落の底がどこかは誰にも分かりません。追加投資の後にさらに下落が続く可能性は十分あります。生活費や緊急資金まで動かしてしまうと、精神的にも財務的にも追い詰められるリスクがあるのです。
3. SNSや周囲の情報に引っ張られる
暴落局面では「もっと下がる」「全部売った」「○○が正解」という情報がSNSにあふれます。こうした情報の多くは根拠が薄く、発信者の投資状況や目的があなたと一致しているとも限りません。自分が設定した投資方針を軸に判断することが、長期投資では欠かせないことです。
積立を続けることの意味
暴落時こそ、ドルコスト平均法の効果が発揮されます。
価格が下がっている時期に同じ金額を投資し続けると、より多くの口数(ファンドの量)を購入できます。価格が回復した時には、下落期に積み増した口数が資産全体を押し上げる構造になるわけです。
仮に毎月3万円を積み立てていて、価格が20%下落した局面が半年続いたとします。その半年も積立を続けることで平均取得コストが下がり、回復後は下落前よりも多くの資産を保有できる可能性があります。積立を一時停止することは、この恩恵をそのまま手放すことになりかねません。
正しい対処法3つ
生活防衛資金を確保する
含み損に動揺する根本的な原因の一つは、生活費との境界線があいまいな投資です。生活費6ヶ月分を投資に回さない状態を保つことが、精神的な余裕に直結します。生活に不安がなければ、価格の上下動にも揺さぶられにくくなるでしょう。
保有を続ける
長期投資を前提にした積立であれば、暴落は通過点の一つです。インデックスファンドは広く分散投資されているため、単一銘柄の急落より回復しやすい特性があります。目安として10〜20年の運用期間を想定しているなら、数年単位の下落は想定の範囲内と捉えることができるはずです。
積立金額を変えずに継続する
毎月の積立余力があるなら、金額を変えずに継続することが合理的な対処法です。積立金額を減らすと、回復局面での恩恵が小さくなります。逆に増やすことも、生活防衛資金を維持できる範囲でなければリスクが大きくなります。
売却が合理的なケースもある
全ての含み損を抱え続けるべきというわけではありません。以下のような場合は、感情ではなく明確な理由に基づいた売却といえます。
近い将来に資金が必要になった、リスク許容度を超えた金額を投資していた、保有商品の信託報酬が高すぎて長期保有に向かないと判断した——こうした理由があれば、見直しは戦略的な判断です。
「下がったから売る」のか「目的が変わったから整理する」のかでは、意味がまったく異なります。前者は損失を確定させる行動で、後者は計画の修正です。
投資信託は価格変動リスクがあり、元本を下回る可能性があります。投資判断はご自身の責任で行ってください。
感情的売却と合理的判断の差
含み損が出た時の行動は、長期の資産形成において大きな分岐点になります。暴落時に感情的に動いた人と、保有継続した人の差は、数年後に数字として現れてくるのではないでしょうか。
NISAの非課税メリットは、長く保有し続けることで最大化されるのです。生涯1,800万円の非課税枠を複利の力と組み合わせることが、この制度の使い方の核心です。一時的な含み損を恐れて売却することは、その恩恵を自ら手放す選択になりかねません。
暴落は怖いもの。それは投資の過程に必ず含まれる要素です。冷静な判断基準を持っておくだけで、長期投資の結果は大きく変わってくるかもしれません。