「複利は人類最大の発明だ」というアインシュタインの言葉を、一度は耳にしたことがあるかもしれません。この言葉が本当にアインシュタインのものかどうかは確認されていませんが、金融の世界でこれだけ広まった理由はあります。実際に数字で確かめてみると、複利の威力が想像をはるかに上回ると気づくでしょう。
単利と複利、100万円を10年預けると何が違うか
元本100万円、年利5%、10年間という同じ条件で単利と複利を比べてみましょう。
単利の場合、利息の計算は毎年「元本×利率」だけで行われます。利息が元本に上乗せされることはなく、100万円 × 5% = 5万円が毎年加算される仕組みです。10年後の残高は150万円になります。
複利は仕組みが異なります。1年目に発生した5万円の利息が元本に加わり、2年目は105万円を元本として計算します。この繰り返しが、資産を雪だるま式に膨らませていくのです。10年後の残高は約162万9,000円です。
| 運用方式 | 元本 | 年利 | 10年後の残高 | 利息分 |
|---|---|---|---|---|
| 単利 | 100万円 | 5% | 150万円 | +50万円 |
| 複利 | 100万円 | 5% | 約162万9,000円 | +約62万9,000円 |
差額は約12万9,000円。10年ではこの程度に見えますが、期間が伸びるほど差は加速します。20年後は単利200万円に対して複利は約265万円、30年後は単利250万円に対して複利は約432万円と、差が拡大し続けます。
月3万円を20年積み立てたとき、元本720万円がいくらになるか
毎月3万円を年利5%で20年積み立てるケースで試算します。計算には複利効果が毎月適用される積立方式(月次複利)を使用しました(月利 = 5%÷12 = 約0.417%)。
元本は3万円 × 12ヶ月 × 20年 = 720万円。これを複利で運用すると20年後は約1,233万円になります。元本との差額は約513万円です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 積立元本(月3万円 × 20年) | 720万円 |
| 運用益(年利5%・月次複利) | 約513万円 |
| 20年後の合計 | 約1,233万円 |
投資せずに普通預金に置き続けた場合、メガバンクの普通預金金利(年0.02%程度)では20年後も720万円とほぼ変わりません。複利で運用した場合との差は500万円を超えます。これが貯金だけの場合と複利で運用した場合のビフォーアフターです。
25歳・35歳・45歳から始めたとき、60歳時点でいくら差がつくか
複利の性質上、同じ月額・同じ利率でも開始年齢が遅くなるほど資産額に大きな差が生まれます。月3万円・年利5%・60歳まで積み立てる条件で比較しました。
| 開始年齢 | 積立期間 | 元本 | 60歳時点の資産(月次複利) | 運用益 |
|---|---|---|---|---|
| 25歳 | 35年 | 1,260万円 | 約3,409万円 | 約2,149万円 |
| 35歳 | 25年 | 900万円 | 約1,787万円 | 約887万円 |
| 45歳 | 15年 | 540万円 | 約802万円 | 約262万円 |
25歳開始と35歳開始の差を見ると、元本の差は360万円ですが、60歳時点の資産額は約1,622万円の開きになっています。10年早く始めるだけで、元本の差の4倍以上の恩恵を複利が生み出しているわけです。
45歳開始と比べると、25歳からの方が元本で720万円多く積み立てていますが、60歳時点の資産では2,607万円の差があります。複利がもたらす時間の価値は、月々の積立額よりも大きな影響を持つことがあります。
複利を理解したうえで、投資をどう考えるか
複利の仕組みを知ると、開始年齢や継続期間が投資の判断軸として具体的な意味を持つようになります。漠然と老後のために貯めようと思うより、10年早く始めると60歳時点で1,600万円以上変わるという数字の方が、行動のきっかけになりやすいでしょう。
NISAのつみたて投資枠は、この複利の効果を非課税で受け取れる仕組みです。通常、運用益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座内では非課税になります。長期の積立で運用益が大きくなるほど、非課税の恩恵も比例して大きくなる構造になっています。
ただし、シミュレーションで使った「年利5%」はあくまで試算の前提であり、実際の運用成果を保証するものではありません。投資信託などの投資商品は価格変動リスクがあり、運用によっては元本を下回る可能性があります。複利の力を活用したいなら、リスクを正しく理解したうえで判断することが前提になります。
アインシュタインが語ったとされる言葉の真偽はともかく、複利という概念が投資を考えるうえでの基本的な土台になることは確かです。この仕組みを頭に入れておくだけで、資産運用に関する情報の見え方が変わってきます。